病気のページ1

症状は?
来院時の主訴として多いのは、どこか痛い、びっこをひく、腰がふらつく、足の甲を地面につけたまま立っている、両足がぴんと伸びてしまって動かないなどです。椎間板ヘルニアは多くの症例で、強い痛みとともに麻痺が起きますが、飼い主さんの多くは「腰が痛い」ことに気づかない場合が多く思われます。
表1 椎間板ヘルニアの症状
どこか痛い
(段差をとび上がらない、抱き上げるとキャンと鳴く)
一肢あるいは複数の肢のビッコ
両足の硬直 (ときどき尿失禁を含む)
どんな病気?
犬の脊椎は、頸部7、胸部が13、腰部7(ときどき6個とか8個の犬もいます)から形成されています。脳は巨大な神経の固まりですが、この神経の塊が尻尾まで伸びている部分が脊髄です。脊髄は脊椎の管(脊柱管)のなかを通り、前肢や後肢、膀胱、肛門などに分布しています(図1)。脊椎の間には、背骨と背骨の間のクッションが存在し、これを椎間板といいます。椎間板が変性を起こすと硬くなり、皮膜を破って飛び出し、脊髄を圧迫します(図2)。これが椎間板ヘルニア(Hansen T型)です。この椎間板が変性しやすい犬種が、ダックスフントやビーグル、それにペキニーズなのです。飛び出した椎間板物質(髄核)に脊髄が圧迫されると、圧迫の部位によって前足がマヒしたり、後ろ足がマヒすることになります。神経障害がひどくならない前に発見して治療すれば治ることが多いのですが、手遅れになり神経細胞が壊死してしまうと、生涯にわたり麻痺が持続することになります。

この中で、椎間板ヘルニア症例で実際の手術実施症例は20例であり、上記の基準を満たしたもの、あるいは点滴治療のみで治癒の見込みが少なかったものです。手術を行った症例全体での回復率を見てみると、治癒率は70%(14/20)となります。しかし、もう少し詳しい内訳をみてみると、椎間板ヘルニアの80%は胸と腰の部分に起こります。先ほどのグレード別に手術の成績を見てみると、グレードVまでは100%の回復率(13/13)、グレードWが50% (1/2)、グレードXでは0% (0/5)でした。したがって、両足が麻痺していて、さらに尿失禁をしてしまっている場合、回復はかなり厳しくなると一般的に言うことができます。ただし、これは当施設の比較的時間の経過してしまった症例でのお話です。ある外国の論文では、痛覚がなくなって48時間以内に手術をした場合には50%は回復するというデータが報告されています。逆に48時間以上経過してしまうと、回復率は6%にまで落ちます。このことからも「痛覚までなくなっているともうだめ」というわけでは決してなく、早期で可能性が少しでもあれば治療を行ってみる価値があると、当施設では説明しています。また、実際の手術法については気持ちの悪くない方だけ、ご覧ください(図5)。