リンパ腫のページ


医療技術の発達した現代医学においても、死亡原因のトップに悪性新生物(悪性腫瘍)、その次に心臓疾患や脳血管疾患が病因として存在する現実があります。

近年、動物たちも獣医療の進歩とともに高齢化が進んできました。そして、ヒトと同様に悪性新生物いわゆるガンにおかされて亡くなるケースがイヌの約半数、ネコの約3割という時代になりました。しかし、治療してあげることにより、ほとんど以前と変わらないくらい元気な状態に戻り、普通に生活できるケースもあります。














                    

         リンパ腫=悪性リンパ腫(リンパ肉腫)

リンパ腫とは、免疫細胞であるリンパ球が腫瘍化し異常増殖した病気のことを言います。そして、この病気は残念ながら完治できる種類の病気ではありません。しかし、治療してあげることにより、また、普段通りの生活に戻れる可能性が高いことも事実です。飼い主さんによっても考え方は色々で、「少しででも一緒にいられる時間が長くなるのであれば、できる限りの治療をお願いしたい。」「苦しむ時間を長くするのはしのびない。」などなど考えられることは様々です。最終的に治療方法を選択されるのは飼い主さんですが、治療法を提示するのは我々の責務だと思います。

更に詳しい内容に関しては、動物種や病期、腫瘍のタイプによっても予後は変わってくるため動物別に記載させていただきます。

イヌを飼われている飼い主さんへ

イヌのリンパ腫で一番多くみられるのは、多中心型と呼ばれ全身のリンパ節が大きく腫れるタイプです。その他に、縦隔型、消化器型、皮膚型と呼ばれるものがあります。  更にくわしくは

リンパ腫の危険性が高い犬種

ゴールデン・リトリーバー、シェルティー、シー・ズー、マルチーズ、雑種、
ボクサー、バセットハウンドなど

診断


針生検…リンパ節など腫れている部分の細胞を少量採り染色することによりだいたいの診断ができます。
血液検査…全身状態の検査を行います。重症の場合(グレード5)は血液中にも腫瘍細胞がみられます。また、高カルシウム血症を伴うことがあると点滴の必要性もでてくるため調べておきます。

レントゲン検査…胸部、腹部の腫瘍の存在を調べます。更に、腫瘤や胸水、腹水の存在が明らかになれば、エコー(超音波検査)により精査、採材を行います。

病理組織検査…針生検にて判断が困難な場合やグレードにより治療方法も異なるため細胞を少し多いめに採材し、病理検査にて判断します。

治療 

 内科療法(抗ガン治療)にて寛解(リンパ節が縮小し触れないくらいの大きさになること。)、QOLの向上(今までと変わらず、普段通りの生活が出来る状態。)を目指します。特殊な場合(腫瘍病巣が腸管などに存在し、閉塞や出血を起こしている場合など)を除いて、外科療法は行いません。

 その他の治療法としては放射線療法が有効とされていますが、治療できる施設が日本では数えるほどしかないため、まだ、一般的な治療法ではないかもしれません。


予後

イヌのリンパ腫の予後を決定する要因としていくつか挙げられます。ステージ、サブステージ、高カルシウム血症、組織型、TあるいはB細胞由来、組織学的分類、抗ガン治療前のステロイド治療の有無などなどと・・・
これらの状態により十犬十色の治療プランと治療に対する反応がみられます。だから、一概にこの子はこのステージだからどれくらい生きられますよ、とは言えませんがひとつの生きる目標として報告例を示しておきます。

UWMADISONプロトコル

完全寛解率 8595%、寛解期間 9ヶ月、生存期間 1213ヶ月

COP(サイクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)

完全寛解率 7080%、寛解期間 〜6ヶ月

ドキソルビシン単独

完全寛解率 6575%、寛解期間 46ヶ月

プレドニゾロン単独   生存期間 12ヶ月

無治療    生存期間 46週間

ここ2年間で当院において犬のリンパ腫が8症例(ゴールデン・リトリーバー3例、雑種2例、シェルティー1例、ビーグル1例、シーズー1例)と犬種はやはりゴールデン・レトリーバーに多いことが見受けられました。腫瘍のタイプとしては、多中心型2例、消化器型4例、皮膚型2例と統計的な分類型とは異なり、消化器型が多く見られました。そして、実際の治療成績としては本来であれば生存期間の長いはずである多中心型(Vb)の症例においては、臨床症状を示していたためか治療開始から3日間の命しか延命できなかった悲しい経験もあります。それに反して、腹腔内腫瘍が大きすぎ癒着していたため切除不可能だったワンちゃんの場合は、抗ガン治療だけで、1年8ヶ月間飼い主さんとともに生活ができたこともありました。だから、実際にガンは闘ってみないとわからないというのが本当のところだと思います。




ネコを飼っておられる飼い主さんへ

ネコのリンパ腫の発生に大きく関わってくるものとしてFeLVFIVのウイルスに感染しているかどうかという問題があります。実際に、リンパ腫になったネコの3080%は、FeLV陽性で縦隔型リンパ腫や白血病の発症率が高くなったりFIV陽性の場合もリンパ腫の発症率が5倍に増加するという報告もあります。

ネコのリンパ腫で一番多くみられるのは、縦隔型(前縦隔のリンパ節が腫大)で症状としても呼吸困難(お腹で呼吸をする。口を開けて呼吸をする。)などの症状を示します。次に多く見られるのは、消化器型と呼ばれ腸間膜リンパ節が腫れ、食欲不振、嘔吐、下痢などの症状で病院にこられるケースが多いです。

その他に、多中心型や腎臓型、肝臓型、皮膚型と呼ばれるものが続きます。

さらに、詳しくは

診断

  イヌとほぼ同じような方法で診断されます。

治療

  イヌとほぼ同じような方法で治療されます。

予後

ある報告では、寛解率約
6575%といわれています。多剤併用化学療法プロトコルによる生存期間は69ヶ月で、約20%は1年以上生存するといわれています。ただし、非治療の場合の生存期間は48週間といわれています。
ネコのリンパ腫は、一般的に腫瘍が再燃した場合、イヌと異なり再度寛解することは難しいです。

また、当院の最近の症例14例のうち9例(胸腺型)がFeLV感染に関連があるといわれている分類型になります。そして、実際にそのうちの8例がFeLV陽性だったという事実もあります。

そして、抗ガン治療に対する反応をFeLVの感染の有無により分けてみるとFeLV陽性の場合の平均生存期間は35.5日(10例)でFeLV陰性の場合の平均生存期間は8.5ヶ月(2例)でした。何を言いたいのかというと、いかにFeLVの感染がリンパ腫になりやくし、抗ガン治療に対する反応が悪いのか!ということなのです。(ただし、2年生存(治癒)した症例、およびFeLV感染不明の症例は平均生存期間からは除外しました。)

 現在は、FeLVに関してはワクチンもあるため予防できるウイルスのひとつです。感染を予防するには野外ネコとの接触を避けるか、ワクチンの接種をお勧めいたします。